IMSLP

IMSLP は International Music Score Library Project の略。版権の切れた楽譜をスキャンして、無料で提供しようというサイトである。楽譜だし、クラシックばかりだから、それほど多くのユーザがいるわけではないと思っていたのだが、なんと先日 New York Times に取り上げられたらしい。

この記事によると、無料ダウンロードのために楽譜の売り上げが減るのではと、出版社が心配しているとのこと。

クラシックの楽譜の値段というのはどうもよくわからない理屈に支配されているようである。昔日本で買ったワーグナーの「ワルキューレ」のピアノ版(歌手の練習用だが、わたしのような素人には、こっちの方がオーケストラ版のスコアより音楽の流れを追うのに便利である。)なんか、7000円くらいした。かと思えば、アメリカで買った「ローエングリン」のピアノ版は10ドルもしなかったように思う。ただしこっちの方は、ベルリンの壁崩壊後の東欧からどさくさに紛れて流れてきた版のようにも見える。最近は知らないが、ベルリンの壁崩壊以前は、東欧ではクラシックの楽譜がものすごく安いというのは一部の音楽愛好家の間では常識だった。わたしは1992年にブダペストに行ったが、その頃(壁崩壊3年後)でも楽譜、それもパルトークやショスタコビッチといったのがすごく安く、品揃えも良かったのを覚えている。

さて、IMSLP、わたしもしばしばお世話になっているが、結論から言うと、ちょっとこの曲、どんなのか見てみたいという時にはダウンロード版で十分だけど、実際に弾くときには今ひとつ、ということが多い。楽譜というのはどれでも同じように見えるかもしれないが、演奏する側からすれば、音符の大きさやスペースの開け具合、指使いの有無といったちょっとした部分が結構楽譜の「質」を左右する。IMSLP の楽譜の場合、版権の切れたものをスキャンしているため、普通ならト音記号表示される音域がハ音記号表示になってたり、(ハ音記号はグレゴリオ聖歌だけでたくさん!)旧ソ連の版を使ってるため(これも版権対策の一部だろう)ロシア語表記、とか、あまりユーザーフレンドリーにはなっていないのである。(別に楽譜にロシア語も英語も関係ないようなもんだが、やはりオペラの配役がロシア語で書いてあると、ちょっと萎える。)あと、ダウンロードした楽譜をレターサイズに印刷すると、やはり小さい。普通の楽譜というのはレターサイズよりもかなり大きいのだが、そのサイズにはそれなりの理由があるのだと納得させられる。

この点では、アマゾンからダウンロードできるキンドル版無料本と似ているかもしれない。有料本がセールで無料になっているものは別として、最初から無料本として提供されているものには、目次がなかったり、いろいろと細かい部分の配慮が欠けている(わざとそうしている?)ものが多い。

ということで、わたし個人の意見からすると、ハイクオリティの楽譜を出版してる楽譜出版社は、IMSLP を恐れる必要はないのではないかと思う。問題は、版権の切れた古い楽譜を、それも一部すり切れたようなのを漫然と出版してる会社だろう。まあ、そういう会社は淘汰されればいいのである。

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