先週号のエコノミストの表紙

先週号(7月9日ー15日号)のエコノミストは「ニュースメディアの将来」という特集を組んでいたが、18世紀のカフェが活発な情報交換の場であったことを踏まえて、それをもじった表紙がちょっと面白かったので紹介。

(画像をクリックすると大きくなります。)

残念ながらネット版の表紙絵はこれ以上大きなものが見つからず、拡大しても解像度があまり良くないので細かいジョークは読みにくいかも。全体に共通するツボは、エセ18世紀風の綴り、言葉遣いで、現代のメディアトレンドをおちょくっているという部分。

1. ケーブルテレビのニュース専門局のように見えるが、アンカーの女性は髪粉をふった鬘をつけ、18世紀風のドレスを着ている。画面下のテロップは”NEWS BREAKETH”(CNNなどではよく”Breaking News”(緊急特報)というテロップが出る)。Breakethという、わざと古い活用を使っている。テレビが流れているものの、誰も画面の方を向いていないというのも、重要な点かもしれない。

2. “PITT the YOUNGER on TUMBLR” 「小ピット、Tumblrに」。小ピットは18世紀後半のイギリスの政治家。最近はブログのプラットフォームとしては、bloggerよりもtumblrの方がかっこいいと思われてるのか?

3. “GRATIS WYE-FYE” gratisは「無償」の意。「無料Wi-Fi」。Wye-Fyeという綴りもなんとなく18世紀的。

4. “MARIE ANTOINETTE’S BLOG ~ NEW CAKE RECIPE” 「マリー・アントワネットのブログ – 新しいケーキのレシピ」。これは説明の必要はないでしょう。アントワネットはtumblrじゃないのね。

5. “Will thou be my Visagebook friend?” 「貴公は拙者の顔本友達になってくださるかな?」Visageとは顔のこと。もちろんFacebookのもじり。

6. “I saw her on ThouTube” 「彼女は ThouTube で見たよ。」ThouはYouのことなので、YouTube。

7. “Is this the South Sea Bubble 2.0?” 「これは南海バブルの二の舞か?」最近のネット関連企業の人気は、ドットコムバブルの二の舞かと言われていることを踏まえて。南海バブルは18世紀の経済バブル。

8. “I hear Tom Paine’s all a-twitter” 「トム・ペインが大人気らしい。」a-twitterは文字通りに訳すと「ツイッターで話題になっている」だが、「話題になる」に相当する普通の単語はabuzz。Googleのソーシャルネットワークの試みの一つにGoogle Buzzというのがあり、あまり成功しなかったので、それも引っ掛けたものだろう。トム・ペイン(トマス・ペイン)は18世紀のイギリス/アメリカの思想家、独立の父の一人。

9. ラップトップ。シルバーっぽいボディはマックか?

10. こちらは紛うことなくiPad。林檎のロゴがはっきり見える。

11. “WIKYE-LEAKES LATEST: Josephine Bonaparte’s emails” 「ウィキリークス最新情報:ジョゼフィーヌ・ボナパルトのEメール」。

12. “TEA PARTY GAZETTE BACHMANN DOTH ROCK” 「ティーパーティー新聞、バックマン最高!」バックマンは最近サラ・ペイリンよりも一部で人気を集めている保守派の女性政治家。Tea Partyといえば、元来はアメリカ独立戦争時の事件の一つであるBoston Tea Partyを意味し、これも18世紀後半の事件なので、この絵の時代と合致する。

13. マウス。Windowsマシン風の2つボタンマウスが床に転がっているのは、最近のタッチスクリーンの隆盛とも関係があるのかもしれない。

起業に向いてるアメリカ?

「日本人もこれからはもっと起業家精神を発揮しなければならない」とか、「日本で起業が盛んでないのは、日本の法律や税制が起業家フレンドリーではないせいだ」なんてよく聞くけど、先週号のエコノミストの記事によると、「起業家フレンドリー」と「起業が盛ん」は同義語ではないらしい。(-> Beware of yogurt

この記事によると、もともとイラン出身のダシュタキさん、おとうさん秘伝の手作りヨーグルトをファーマーズマーケットで売ることを思いつき、必要な役所の手続きを開始した。ところがヨーグルトは乳製品なので、普通の食品販売の手続きに加えて、乳製品販売のための特別な手続きが必要であることが判明。しかしその規則によると、乳製品を製造販売する場合は、A級乳製品加工工場 (というのが、一体どういうものなのかはよく分からないが)を設置し、記録装置付きの加熱殺菌装置をはじめ、さまざまな機械を導入しなくてはならないという。ダシュタキさんが、自分のヨーグルトは、生乳ではなく、既に加熱殺菌された牛乳でつくるから、この規制の対象外にしてほしいと申し出ると、そのような例外は認められないとのこと。仕方なく規則に従うべく準備を進めていると、なんと次に、「乳製品の加熱殺菌処理は一回しか行ってはならない」という規則にぶち当たった。

はあ???

つまり、ダシュタキさんがヨーグルトを製造販売したければ、原料となる牛乳を自分のところで加熱殺菌しなければならない、と言っておきながら、その規則に従って加熱殺菌すれば「乳製品は二回加熱殺菌してはならない」という規則に抵触するというわけらしい。

これにはさすがのダシュタキさんも呆れ返り、秘伝の手作りグルメヨーグルト販売で起業することは諦めたという。

この起業家の熱意を打ち砕き、引き換えに州民を不法ヨーグルトによる食中毒の脅威から守ったスバラシイ州は —

実はカリフォルニアである。

カリフォルニアというと、「シリコンバレー!グーグル!アップル!」「ゴールドラッシュ!」「ハリウッド!」といった連想から、起業に向いた土地というイメージがあるが、税金は高いし、規則は複雑怪奇だし、全米50州の中で最も起業に向いてない土地という定評があるそうだ。だから、カリフォルニアで起業が盛んなのは、「起業に向いているから」ではなく、「起業に向いてないにもかかわらず」と考えた方がいいのかもしれない。