The Artist

今年のアカデミー賞は明日らしいけど、遅まきながらノミネート作のひとつ、The Artistを見てきた。

サイレント映画スターのジョージは、女優志望のペピーと偶然出会う。ジョージのちょっとした口添えで映画出演の足がかりを掴むペピー。それを機に、彼女は少しずつ女優としての実績を伸ばしていく。

2年後、映画会社の社長が「サイレント映画はもう古い」と、音声付き映画に方針転換する。新しい方針に賛同できなかったジョージは、自分でサイレント映画をプロデュース。その映画の公開は、ペピーの主演する音声付き映画の公開と重なった。結果はジョージの惨敗。1929年の株式市場の大暴落に加えて、妻との離婚も相まって、ジョージは経済的窮地に立たされる。

裏びれたアパートで、長年連れ添った愛犬と二人(?)きりで暮らすジョージ。先行きの見通しもなく、自暴自棄になったジョージは、自分の出演作のフィルムに火をつける。そして。。。

ストーリー展開は予想通り、最後はハッピーエンドの非常にチャーミングな映画。サイレント仕様で、ほとんど人間の会話なし。ストーリー展開上必要最小限な会話は、字幕で提示される。カーチェイスもない、暴力シーンもセックスシーンもない、結末は見え見えなのに、それでもワクワクドキドキできる、ある意味で「昔の映画」の良さをありったけかき集めてお洒落にパッケージした、楽しい2時間弱だった。

そもそも主役ジョージの苗字はヴァレンティン。明らかにサイレント時代のスター、ルドルフ・ヴァレンティノを意識した命名だろう。羽振りの良かった時代にジョージが住んでいた豪邸は「サンセット通り」を思わせる。「忠実な執事」も「サンセット通り」に出てきましたね。(The Artistの執事役は牧羊豚映画Babeのホゲットさん。)スターへの階段を登る若い女と、下り坂の男という取り合わせは、「スター誕生」そっくり。「スター誕生」はもっと重いけど。

そして忘れてはならないのが、スーパードッグ、ジャック。(本名、アギー。)「会話音声がない」「何を言ってるかわからない」というのは、この映画の重要なポイントで、だからこそ「人間の言葉をしゃべれない犬」というのが意味を持つわけである。このアギーちゃんの名演、「男優賞にアギーを」という声が絶えず、BAFTAは「アギーは賞の対象外」との声明を出すはめになったとか。明日のオスカー、アギーが来るなら中継を見てもいいと思うくらい。

しかしこの映画、実はフランス映画。今のハリウッドはこういう幸せな映画を作らないんだなあ。