緑藻細胞にイオン流入

ツイッターを眺めてたら、あんまりにトンデモな記事のリンクが貼ってあったので仰天。→

それもスポーツ誌やゴシップ誌ならともかく、いちおう日経なんだからショックも大きい。(あまりに恥ずかしい記事なので早々にサイトから撤去されると思いきや、12時間以上たってもまだ平然とアップされたまま。万が一、撤去されたときのために、スクリーンショットを撮ってしまった。)

ちなみにこちらが東大が発表したプレスリリース。→

ついで、これもツイッターで教えてもらったのだが、マイナビというところにはもうちょっとマシな記事が出ている。

一読するまでもなく、日経サイトの記事を書いた人が何も理解してないことは明らかなのだが、どうしてこんなことになるのかちょっと考えてみた。

もちろん日経程度の規模の新聞社に、ちゃんとした科学記事の書ける記者がいないのは論外だと思うのだが、東大のプレスリリースも、これは高校程度の生物の知識しかない人は言うまでもなく、大学(学部生)で生物を専攻しても、この分野が専門でなければ何を言ってるのかわからないのではないだろうか?レベルとしては、膜タンパク構造あるいは神経生理専門の学会のポスターの内容だと思う。マイナビの方も、東大のプレスリリースを少し噛み砕いた表現にしているだけで、非専門家にわかりやすいとは思えない。

わたしがこれを一般向けに書きなおすとすれば、以下のような展開にする。

  1. ロドプシンって知ってますか?ロドプシンがないと、目が見えません。
  2. 驚いたことに、ロドプシンと同じような仕組みは、「目」のある動物だけじゃなく、緑藻のような生物にもあるのです。
  3. 緑藻ではロドプシンはこんな役割を果たします。最近では、その仕組みを利用して、動物実験で神経細胞の働きを調べるのに使われるようになりました。
  4. 東大のグループが、この緑藻由来のロドプシンの3次元構造を解明しました。
  5. 3次元構造が解明されたおかげで、これまでできなかった「あんなこと」や「こんなこと」も出来るようになると期待されています。現在は基礎研究のツールですが、こういった実験を重ねていくと、将来的には神経疾患の原因究明や治療に役立つとのことです。

一般向けの記事には、結晶構造解析にどこのX線マシンを使ったかなんて関係ないし、タンパクが二量体かどうかなんかも関係ない。グルタミン酸がイオンチャンネルを形成すると書かれても、「グルタミン酸って味の素だっけ?」くらいのもの。

国民のサイエンスリテラシーがどうの、と言うけれど、アカデミア側も一般社会側も、相手任せにして文句ばかり言ってもギャップは埋まらない。お互いに歩み寄る努力をしないと。