Storm!

中西部、とくにこのあたりのプレーリー(「大草原の小さな家」の「大草原」とは「プレーリー」のこと)は夏は暑く、冬は寒く、竜巻や猛烈な雷雨に見舞われる土地柄である。これまで一番ひどかったのは、オマハに引っ越して来て1年目の夏(2008年)で、市内に竜巻がタッチダウンしたり、竜巻ではないがハリケーン並みの暴風が吹き荒れたりで、うちの庭も大きな針葉樹を含めて、何本かの木を失った。それでも近所では、大きな木の枝が屋根に落ちて、屋根を建て直さなければならなかった家も何軒か見かけたから、それに比べればうちは外壁が雹でへこみ、屋根のシングルが少々飛ばされ、電線が切れた程度で被害としてはマシな方だったと言える。

暴風雨が吹き荒れると面倒なのは停電することである。日本では電力需給の問題で停電の恐れがあるというだけで大騒ぎのようだが、アメリカでは何の予告もなく本当によく停電する。自家発電を持たないスーパーは、停電すると生鮮商品の適切な保管温度が保てないので閉店する。(キャッシュレジスターも動かないだろうし。)家の電動ガレージドアも動かない。昔メリーランドに住んでた頃、冬の最中にアイスストームで停電して、オール電化の家だったので寒くてたまらず、空室のあるホテルを見つけて泊まりに行ったこともある。シカゴは停電が多かっただけではなく復旧も遅く、夏場に何日も停電して冷蔵庫の中身がバーということが何度かあった。

暴風雨の直後は、近所のHome Depotであっと言う間にチェーンソーと簡易自家発電機が売り切れる。日本に住んでいた頃は自分の家にチェーンソーを常備することになるとは想像だにしなかったが、このあたりではチェーンソーは家のメンテナンス上、芝刈り機、除雪機並みの必需品なのである。

夏の停電は、それでも嵐の過ぎた翌日は爽やかな晴天が広がるし、日も長いので、あまり陰鬱な気分にならない。いちばん嫌なのは冬の停電である。うちは暖房の燃料はガスだが、温水を循環させるためのポンプは電動である。温水器もうちは瞬間湯沸かし機なので、電気が必要。冬に停電が続いて家の温度が下がると、水道管が凍る恐れがあるのが一番困る。日も短いから、一日中、寒くて暗闇の中にいるような気分で、ますます気がめいる。

さて昨日の暴風雨では、うちは停電だけで大きな被害は免れた(空港ではパイロットが頭に雹を受けて重傷だそうだ)が、真っ暗闇の中のロウソクの灯の明るさというのは、不思議と人の心を暖かくする。ロウソク一本ずつ、二つの燭台に点して、同居人と一つずつ使ったのだが、けっこうロウソク一本の灯で本が読めるくらいの明るさがある。燭台を持って家の中をうろうろすると、ちょっとディケンズの登場人物になったような感覚が味わえる。

夜10時頃から近くでチェーンソーの音が響きはじめ、「あ、これはもしかすると、電力会社の復旧部隊が近くに来たのかな」と思っていると、11時に電気が復旧。かくしてつかの間のディケンズごっこは終了したのだった。