When We Were Orphans

The Remains of the Day で知られるイギリスの作家 Kazuo Ishiguro の小説。 Ishiguro はいちおう日本生まれではあるが、育ったのはイギリス、作品も英語ばかりだから、イギリスの作家とするのが適当だと思う。

上海で阿片貿易の片棒を担うイギリスの会社に勤める Christopher の父が行方不明になり、間もなく、 Christopher の敬愛する美しい母も誘拐される。孤児となった Christopher は、イギリスの親戚のもとで育てられ、やがて大学卒業後、探偵として名を馳せるようになる。しかし、彼が探偵となった真の目的は、子供の頃に行方不明となった父母の行方を探すためであった —

主人公の一人称による語りでストーリーが展開し、彼の思考が前後するたびに、時系列に関わりなくエピソードが繰り広げられていくのは、 The Remains of the Day と同じ、 Ishiguro 独特の展開法である。 The Remains of the Day が「執事」というもっともイギリス的な職業に視点を当てたとすれば、この When We Were Orphans の主人公、 Christopher Banks の職業は探偵、ということで、読み手がシャーロック・ホームズやエルキュール・ポワロといったイギリス人作家の生んだ名探偵を思わず連想してしまうのは、作者が最初から意図したことであろう。しかし舞台が二十世紀前半の上海ということで、ホームズやポワロとは全く違った背景が設定される。

(ネタバレになるので、これ以上詳しく、筋書きは書きません。)

この作品を読む前に、 The White Countess という第二次大戦前の上海を舞台にした Merchant-Ivory 映画を見たことがあったが、この映画の脚本は実は Ishiguro が書いている。表向きは「上海」を除けば、 When We Were Orphans とはあまり共通点はない。しかし、 The White Countess の Todd Jackson は、ある意味で When We Were Orphans の Christopher Banks の裏返しであり、もしかすれば The White Countess は When Were Were Orphans のもう一つの結末とも言えるのではないかと思うくらい、その世界は不思議に似通っている。