ヘッドハントのこと

MSN産経産経ニュースから

「東日本大震災後に、海外の大学や研究機関から東京大や東北大の研究者らにヘッドハンティングを働き掛けるメールが相次いで届いていることが7日、分かった。

鈴木寛文部科学副大臣が大学関係者から聞いた話として同日の記者会見で明らかにした。日本での研究活動に制約があると決めつけた「風評被害」だとして不快感を表明した。」

わたしが東北大関係者から聞いた話では、同大学の医学部などは実験施設に大きな被害を受けて、今すぐに実験が再開できる状態でないという。他分野のことは知らないが、バイオ系では実験機器が破損すれば当然のこと、実験ができない。たとえ破損を免れた機器があっても、衝撃で調整が狂い、再調整するまで動かせないものも多いだろう。今のところ大きな被害は免れた東京だって、電力供給の先行きが不明だ。ラボというのは、とにかく電気を食う。その事実を前にして、「風評被害」とはこれ如何に?

いったん、それも旧帝大系のファカルティーポジションに就いたら、そこからあまり動かない日本とは違い、アメリカでは、条件の良いところがあれば、どんどん移動するのは普通である。ハリケーンで施設が壊滅した、新しく来た学部長の方針が気に入らない、天変地異から個人の事情まで、ありとあらゆる理由で人がどんどん入れ替わる。もちろん自分の意思とは関係なく、動かざるを得なくなる人もいる。しかし、何かあった時に自分の都合で動けるのは、他所の大学にとって魅力ある人、つまり、潤沢な研究資金を持ち、良いペーパーを出し、業界の第一人者と見なされている人である。悪条件下で動かない人は、「動かない」のではなく「動けない」と見られることさえある。

また、本人は異動する気はなくても、わざと他所からのオファーをもらって、それを現職施設での待遇改善(昇給、昇進)の交渉材料にするのはあたりまえである。日本の研究者にオファーを出している海外施設は、もしかしたらそういった交渉材料に使えるように、という「親切」でやっているのかもしれない。残念ながら日本のお役所にはそういった機微は通じないだろうが。

この発言をした人は、「風評被害」という言葉の意味を本当に知っているのだろうか?