Amour

卒中で衰え行く妻を自宅で介護する夫。退院の際に妻は夫に「二度と病院にはやらないで」と懇願する。娘は「自宅で介護なんて無理、しかるべき施設に入れるべき」と。

今の時代、どこの国でも避けて通ることのできないテーマなんですね。

それにしても、さすがフランス映画、キャスティングがすごい。主役のアンヌはエマニュエル・リヴァ(Hiroshima mon amour)、夫のジョルジュはジャン=ルイ・トランティニャン(Un homme et une femme)、娘はイザベル・ユペールなのだが、この二人の前では「え、あれ、イザベル・ユペールだったの?」というくらい、この老夫婦の存在感が圧倒的。

ストーリーはほぼ終始一貫して老夫婦の住むパリのアパートの室内(キッチン、寝室、客間)で展開する。老夫婦はどちらも元音楽教師という設定で、そこで演奏される音楽がシューベルトのピアノ曲、というのが、またまた渋い。シューベルトは表面は美しくても、心の中に冷たい風が吹くような、逃げ道のない諦観・絶望感を音にしたものだと思う。

映画の最初に、結末が暴露されているので、観客はそこに至る過程を老夫婦と一緒に歩むだけである。アメリカ映画なら必ず挿入されたであるような「心温まるエピソード」や「奇跡」は起きない。しかし、これが人生というものではないのだろうか。