ミケランジェロ???

今日は違うことを書くつもりだったけれど、このNew York Timesの記事があまりに気になったので、変更。

ミケランジェロの作品というのは彫刻が主で、絵画、それも壁画とかじゃなくて、画架に乗るもので真作と意見の一致しているのは一点しかないらしい。で、ニューヨーク州北西部バッファロー郊外の、とある個人の家の長椅子の後ろで埃をかぶっていた絵が真作かどうか、という記事。なんでそんなものがニューヨーク州にあるのかというと、19世紀の後半、ドイツの貴族がこの絵をアメリカで売ろうとして売れず、転々とするうちにこの個人の家に落ち着いたということらしい。

題材はピエタ。ミケランジェロがヴィットリア・コロンナに贈ったピエタの「絵」に対する感謝の手紙が残っているそうだが、これがそのピエタだというのが真作派の主張。贋作派は、コロンナに贈られたピエタは「絵」 (painting) ではなくて「素描」 (drawing) の間違いだと言い、ボストンにあるのがそれだという。

問題のピエタ。(このサイトの方が写真が大きくて見やすいかも。)

ボストンのピエタ。(もとはこのサイト。)

参考までに、有名な彫刻の方のピエタ。(これも元は上と同じサイト。)

わたしは美術に関しては素人以下だが、今朝、New York TimesのArts欄のトップページでヘッドラインを読む前にこの絵を見た第一印象は、「げっ、ugly!」。ヘッドラインを読んで、これがミケランジェロかどうかが問題になっていると知ったとき、「これやったら、たとえミケランジェロでも、いらんわ。」というのが正直な感想だった。

まず何よりも、バランスが悪くて、ぎこちない。バチカンの壁画なんか、ミケランジェロは膨大な数の人間を大量生産で描いているわけだが、どの人物をとっても座りの悪さを感じさせない。それに、マドンナの顔はブリューゲルかなんかの農家のおばさんみたいだし、着衣のドレープも稚拙、おまけにキリストの腹筋の付き方も変。ミケランジェロは女性や子供でも結構筋肉ムキムキに描く傾向があったようだが、「筋肉ムキムキに描く」ことと「解剖学上ありえないような筋肉の付け方をする」ことは別。素描の方はそんな不自然な筋肉の付き方してないし、マドンナの顔も、バチカンのシスティナ礼拝堂の壁画に登場する人物にどことなくイメージが近い。(ここにあるデルフィのシビルなんかも、ドレープがもっと自然。)

この記事に付いたコメントの中には、ミケランジェロがコロンナにピエタを贈ったのは晩年のことで、その頃には視力も衰えて画筆が鈍っていたという擁護意見もあったが、芸術家の持ち味というのは根底の部分では変わらないはず。晩年になって老醜を晒したダヴィッドなんかでも、登場人物の表情などは最盛期のものとすごく似ている。だいたい、こんな出来だったら、ちゃんとした芸術家なら恥を晒すより、破棄しちゃうんじゃない?

ということで、わたしのこの作品の由来に関するuneducated guessは、ボストンの素描はコロンナに贈ったピエタの下描き、このニューヨークのピエタはコロンナに贈ったものを誰かが模写したもの、模写された時期はすごく古いかもしれない、コロンナに贈られたオリジナルは紛失、というところですが、いかがでしょう。