サイズの怪

穀物など様々な原材料の値上がりのため、生活必需品の値上げがじわじわ進行中である。それも値札に書いた値段を上げるのではなく、パッケージサイズを縮小するというやり方が多い模様。

たとえばこんな具合

うちでも新しく買ったトイレットペーパーは、古いのに比べると全然背の高さが違うことを発見。(残念ながら写真に取り忘れたが。)同居人が「こっちの方がお得やで」と買ってきた10インチのチーズケーキは、7インチのに比べてずっと薄かったし。(ケーキを味よりも直径で比べようとするところが、いかにもアメリカ人である。)

ところでアイスクリームなんかは、古典的には半ガロンだったそうだが、今では1.5クォートまで縮小されたものも珍しくない。この「ガロン」だと「クォート」だのいう単位、本当に困るんだよね。なんでいい加減にメートル法に統一してくれないのか。(一応、併記はされているけど、でもやっぱり 1.89 L とか読み取りにくくありませんか?きっちり 2 L にしてくれればいいのに。)

そんなことに腹を立ててるうちに、変な空想に取り憑かれた。

うちが日本からの駐在員の家庭で、小学生くらいの子供づれで日本からアメリカにやってきたばかりだとする。子供は最初は言葉に苦労するだろうが、学校の友達などと話しているうちに、どんどん英語を習得し、1年も経たないうちに周りの子供と遜色ない英語を話すようになるだろう。しかしある日、「牛乳がもうあんまり残ってないよ。」「どれくらい残ってるの?」「う〜ん、4オンスくらい。」

— 自分の子が「100cc」じゃなくて「4オンス」って言うようになったら、「もう英語勉強せんでええから、日本帰れ」って言うかもしれない。

Bad Project (ビデオ)

昨日ツイッターで流れて来て、あっという間にサイエンス関係の人たちの間で大評判になったビデオです。同業者でないと何が面白いのか今ひとつ掴めないかもしれませんが、わたしはメチャクチャに笑わせてもらったのでリンクしておきます。

元歌は Lady Gaga の Bad Romance だそうですが、わたしは Lady Gaga を見たことがないので、これがどの程度の出来なのか評価できません。

いくつかポイント
1分26秒 ー 彼女が求める恋人は、生物系最高峰とされる学術雑誌 Cell (に自分の論文を発表すること)。
1分31秒 ー 頭のリボン、肩に付いているオレンジの飾りは、どちらも小型の biohazard bag (細菌やウイルスの付着している可能性のあるゴミを捨てる専用の袋)。スカートは大型の biohazard bag。
2分26秒 ー このブルーの衣装は、俗に diaper (オムツ)と呼ばれる吸水バッド。実験するときに自分のベンチが汚れないようこれを敷き、汚れたら捨てます。2分52秒に再登場。
2分38秒 ー チューブに貼られた中国語のラベルは、骗人(liar),实验室不给力(the lab is ungeiliable),没前途(no future),老娘要毕业(just wanna fucking graduate). PS: ungeiliable is new term that stand for “meaningless” recently in China – kinda cool word なんだそうな。「嘘つき!このラボ終わってる!お先真っ暗!はよ卒業して〜よ〜!」というところ?
2分52秒 ー 後ろのコーラスの着ている黄色いのは、動物舎などでよく使われる使い捨ての白衣。背後の肖像画は 心臓外科の神様、 DeBakey 先生かな?(このビデオをプロデュースしたのは Baylor のラボらしいので。)
3分32秒 ー 指に付いてる長い付け爪みたいなのは、ピペットチップと思われる。
3分33秒 ー 頭の飾りはウエスタンを現像したあとのフィルム。3分44秒にもたくさんの(失敗とおぼしき)フィルムを纏って登場。
4分33秒 ー 実験がうまくいかないから、もう諦めて職探し!と見ているサイトは CraigsList 。

コメントの中で一番笑わせてもらったのは、

The concept of this work is excellent and it applies a very interesting approach to a long-standing problem. Unfortunately, though the work is very appealing, the figures well designed, and as a whole a pleasure to review, it does not actually result in any new insights or potential resolutions to the problem. Therefore this reviewer cannot recommend it for publication in Cell.

(この研究のコンセプトは秀逸で、長らく問い続けられてきた問題に非常に面白いアプローチを適用している。しかし残念ながら、この研究は非常に魅力的で、図版はよく練られており、全体として査読者冥利につきるのだが、この問題に、実際的な新しい見解や解決法をもたらすものではない。よって、この研究は Cell 誌掲載にふさわしいとは思えない。)

このコメント、論文の査読に付いてくる論調そのものなんですわ〜。うまい!

トッカータとフーガ

Twitterでオルガンのことをつぶやくと結構反響がある。パイプオルガンに興味ある人って思いのほか多いらしい。

さて、オルガンといえばバッハ、バッハのオルガン曲といえば真っ先に思い浮かぶのが BWV 565 のトッカータとフーガ。(チャララ〜ン、チャララララン、ラ〜ンってやつ。ウィキペディアの該当ページで聞けます。)しかしこれには偽作疑惑があるらしい。一説によると、元は d moll のオルガン曲ではなく a moll のヴァイオリン曲だったのを、後世の作曲家がオルガン向けにアレンジしたのではないかと。疑惑の根拠の一つは、バッハのオルガン曲にしては構成が単純すぎるということらしい。たしかに楽譜を見ればよくわかるが、ペダルが動いている間は手は休み、とか、バッハにしては妙に弾き手に優しい構造になっている。基本的にバッハの鍵盤楽曲というのは、単純そうなセクションでも弾き手は一瞬たりとも気を抜けない意地悪なのが普通なので。

このヴァイオリン版、なんと YouTube で聞けます。 Vanessa Mae とかのポップ的ヴァイオリンじゃなくて、バッハ偽作説に基づいて再構築された a moll のやつが。聞いてみるとこれは元々ヴァイオリン曲だったという説が妙に信憑性を帯びてくるように思えるのですが、どうでしょう?

The Big Short

The Big Short: Inside the Doomsday Machine

Kindleをいじっているうちに、半分間違いでBuyのボタンを押してしまったのだが、あまりの面白さに一気に読んでしまった。(ちなみにKindleは間違えて買ってしまった場合は、その場で「返品」することができる。)

一年ほど前に出た本だし、日本語訳も出ているそうなので、もうご覧になった方も多いかと思うが、不動産バブルの真っ最中にサブプライムローンを元にした金融商品の問題点を見抜き、早くからその暴落を予想して賭けに勝った人々の物語。ここで興味深いのは、登場人物の多くがウォール街の「部外者」だということだ。90年代から株式のアナリストとしてサブプライム業界をカバーし、後に独立してヘッジファンドを開いたSteve Eismanは別として、片目で人間嫌いの医者Michael Burry、自己資金$110,000で「家内ヘッジファンド」としてスタートし、最終的に$100 million以上に資産を膨らませたCornwall Capitalの三人組、どちらもいわば独学の投資家たちである。

もちろん、Hindsight is 20/20 で、今の時点で2000年代半ばの住宅バブルを批判するのは容易だが、それでもこの本を読んで痛感したのは、投資において、いかにプライマリーデータを自分の目で見て解釈することが大事か、ということ。格付け会社のレーティングなんか当てにしてはならないのである。何しろ、バブルの最盛期に濫造された、所謂「エキゾティックな」金融商品の中には、BBBのサブプライムモーゲージボンドを集めて新しいプールを作り、その上位80%をAAAと格付けする、などというとんでもないものがまかり通っていたのだそうだから。(汚い例えだが、まるで道に落ちている犬の糞を集めて大きな山を作り、「この山の上の方8割は金(ゴールド)で出来ている」と宣言するようなもんだ。)いくらAAAを装ってみても、根底にあるのはBBBのサブプライムモーゲージなのだから、そのうちにそれが「犬の糞」であることが明らかになる。しかしその事実が明らかになった時には、サブプライムボンドの作り手である金融機関も自分たちの幻想を信じ込んで、大量の「犬の糞」を在庫に抱えていた。実際はもっともっと手の混んだ手法が使われたわけだが、端的に言ってこれがtoxic assetの正体であり、金融危機の引き金である。

格付け会社と投資銀行との関係も興味深い。格付け会社は投資銀行に比べると格段に給料が低いので、頭のいいヤツ、野心のあるヤツは最初から入社しない。その上、投資銀行が自分のところの金融商品の格付けを依頼しなくなれば、格付け会社は収入がなくなるので、投資銀行の気に入らないような格付けはしない。このような構造的欠陥がある限り、公平な格付けは不可能だろう。

この本の登場人物たちが利用したプライマリーデータは、基本的に誰でも手に入れることのできるものばかりである。金融機関のセールスの口車や、市場のセンチメントに流されず、コモンセンスを持ってデータを分析する– あれっ、これってサイエンスと一緒じゃない?

この本の一部はVanity Fairのサイトで読める。)

The Social Network

近所の安売り映画館に例のFacebookの映画が回って来たので、先週末に見に行ってきた。(安売りとはいうものの二人で5ドルだからDVDレンタルの方が安いのだが、同居人はいちおう映像作家なので画質にうるさい。だから、映画館で見れるものは、なるべく映画館で見たがるのである。)

これはあくまで事実を元にしたフィクションなのだそうだが、いかにもハーバードらしい傲慢さ、自信満々な学生たちの頭でっかちな嫌らしさがうまく描かれており、映画としてはなかなかの出来だと思った。

ただ、この映画を見てつくづく思ったのは、Facebookは20歳くらいの子が面白いと思うものを「カタチ」にしたものだということ。友達同士で連れ立ってトイレに行くような、そんな「子供」の考える人間関係の価値観を基に設計され、それを押し付けようとするところが、わたしがFacebookを良く思わない理由の一つでもある。(もちろん、Facebookの変にタイトな人間関係を適当にあしらって、意見を広める場としてうまく利用しているユーザーもいるのは事実だが。)作中に登場するFacebook本社内部(職場に卓球台があり、ジュースは無料の模様)はまさしく大学生の思い描く「夢の職場」であり、「犬の想像する天国は、泥と骨に満ちあふれている」という名言(?)を思い出してしまった。

フードバンク利用者急増の裏

食料危機:何百万人ものアメリカ人が、生まれてはじめてフードバンクに — 中流家庭家計大ピンチ、頼りはフードバンク

日本の新聞記事風にタイトルを訳すと、こんな具合だろうか。このタイトルから受ける印象はどうだろう?「アメリカ生活ってやっぱり大変だな。ちゃんと働いてても簡単にレイオフされるし、仕事がなければ明日の食事にさえ事欠くありさま。ほんとうにとんでもない国だ。」

ツイッターを流れてきた中から拾った記事なのだが、わたしにはこの記事は、タイトルから受ける第一印象とは全く違ったアメリカ社会の病巣を浮き彫りにしているように思えた。

内容は、タイトルの通り、最近のフードバンクの利用者は中流階級が増えているというもの。ニュージャージー州のとあるフードバンクで利用者にインタビューした、という構成になっている。

いくつか例を拾ってみる。

デボラさん(以下、すべて仮名)、二十代、四人の子供を抱えるシングルマザー。8ヶ月前に失業し、現在は倉庫で最低賃金で働いている。

— う〜ん、ステレオタイプで悪いけど、二十代、子供四人のシングルマザーは中流じゃないよ。

ジョーンさん、夫と子供四人の六人家族。もとはオハイオ州トレド郊外(デトロイトの南に位置する。中西部ラストベルト都市のひとつ。)在住で、夫は26年の経験を持つパイプライン技師。トレドでは夫の年収は8万ドル以上、彼女も自宅でデイケアを開いて収入を得ていた。しかし14ヶ月前に夫が失職。ニュージャージーに仕事を見つけて一家そろって引っ越して来たものの、今では年収4万ドル、家賃$1125のトレーラーパークという生活だ。

— トレドで夫婦合わせて10万ドル近い年収があれば、かなり余裕のある生活ができてたはず。経験26年といえば、この夫婦は40代か?貯金はないの、貯金は?奥さんの仕事を増やすとか、旦那さんも何か事業を始めるとかしてトレドで暮らすことはできなかったの?ラストベルトに見切りをつけて引っ越すにしても、わざわざ生活費の高い東海岸じゃなくて、シカゴとかサウスみたいにもう少し安いところに行くとか、他に選択はなかったの?

郵便局職員ポールさん。年収5万2千ドル、奥さんはパートでハウスクリーニングをしており、子供は6人。ニューヨーク、クイーンズに住んでいたが、年々値上がりする家賃に嫌気がさして、ニュージャージーに引っ越してきた。しかし希望していたニュージャージーの郵便局への転勤が叶わず、2時間かけてニューヨークへ通勤する毎日。おまけに子供二人には学習障害があるので、よい学校のある校区に住みたい。

*****

多くのケースに共通しているのは、失業しても、収入が増えなくても、いったん手に入れた中流ライフスタイルは捨てない、という点。限られた収入から優先して払うのは、車の維持費であり、子供の学校の費用である。携帯電話、インターネットのない生活はもう考えられない。かくして皺寄せは食費に来る。

車やインターネットを優先する理由のひとつは、「職探し」である。交通手段がなければ、ジョブインタビューに行くことができない。求人広告を見るためにはインターネットが欠かせない。インタビュー用の服だって必需品。

しかし、食費が犠牲になるのには、もう一つ大きな理由がある。

「周囲の目」だ。

この間まで家の前に停まっていた新車がなくなって急に中古のボロ車になったら、突然子供の習い事を止めさせたら、近所で「あの家はお金に困っているらしい」と噂がたつ。しかし、家の中でフードバンクで貰った豆の缶詰を食べてたって、誰にもわかりやしない。

バブルの頃は、お隣さんに負けないように (keeping up with the Joneses) 、クレジットカードとホームイクィティローンを目一杯使って新車を買い、新しい家電製品を買い、子供の教育費を調達した。バブルが弾けて簡単にクレジットが使えなくなっても、どっぷり染み付いた消費メンタリティは容易には抜けない。かくして人は、食費を削ってまで、お隣さんに負けない生活を守ろうとするのである。

Grouponのこと

時間の無駄とは知りながらも、twitter をやってると、「表」の世界だけではわからない日本の情報が入ってくる。テレビ番組や歌唄いの話題のようにさっぱり見当のつかない話題もあれば、たまにはもう少し実感の湧く出来事も。その中で正月早々から大いに盛り上がってた話題が、グルーポンのおせち料理。実際におせちを売っていたのはバードカフェというレストランで、これがグルーポンを通じておせちの割引販売を実施したのだそうだが、早くも「グルーポンのおせち事件」という名が定着してしまったようだし、実際にグルーポンのサイトに返金、お詫び商品の案内が出ている。(どうでもいいことだけど、アメリカで返金は当たり前だけど、お詫び商品ってのは貰った記憶がないなあ。)

グルーポンのビジネスモデルについては、Market Hackのこのエントリーが分かりやすい。これを見ればわかるように、グルーポンに出すと、おおざっぱに言って店側には定価の25%しか収入がない。

この事件のおかげで「レストラン業界の裏事情」みたいなリンクも読ませてもらったのだが、ある「店長」さんのコメントによると、材料費は売値の3分の1が相場らしい。その上に人件費や光熱費もかかるから、定価の25%では当然儲けは出ない。この店長さんはそれが不満なようだが、そもそもグルーポンに出すというのは広告を打つということであり、クーポン対象外商品の売り上げや、リピーターの獲得が目的なのだから、その仕組みから考えれば、儲けが出ないのは不思議でも何でもないわけである。

そうすると、クーポンの発行枚数は、広告費にどれだけお金をかけられるかという店の資金力に見合うものでなければならない。とくにおせちのように販売期間がものすごく限定された上、手間がかかり保存がきかない商品では、その短期間に人海戦術でオーダーを捌くノウハウも必要になる。あと、自分の店のキャパシティを越えたオーダーに対して「ノー」という決断力も。今回の事件でそういった見通しが全く欠けていたことは、レストラン側の社長のインタビューからも明らかだ。

このサイトを見ればわかるように、一般のグルーポン商品なら、クーポンの使用は一時にどっと集中するのでなく、期間中まんべんなく、というのが普通のようだ。わたしは先日グルーポンでエコノミスト(雑誌)を一年分、一冊1ドルで注文したけど、雑誌なんか腐るもんじゃないし、宅配開始が一週間遅れても大して問題ないから(最初から宅配開始は3〜4週間後と書いてある)、クーポン販売に適しているわけである。

と、正月早々、経済、マーケティングのど素人が、今をときめくグルーポンに言いたい放題を言ってみた。

(付け足し)
この飲食店の社長さん、辞任したみたいですね。
規模は違うけど、同じくキャパシティーを越えるおせち販売でひどい目にあったこっちの社長さんは、何とか持ちこたえたみたいだけど。(2005年〜2006年の話らしい。)
少し次元は違うが、twitterを眺めてたら予約のクリスマスケーキが足らなくなってひどい目にあった人の話も見つけてしまった。予約取り置き分の数え違いが原因だという。売れ残りゼロのリーンな経営もいいけれど、人間(いや、たとえロボットを使ったとしても)がやることには絶対ミスが起こるのだから、予約分には一定数の余裕を持たせることをシステムに組み込めないんだろうか?