Guns, Germs and Steel
Jul 18th, 2010 by F Fries
10年以上前に出た人類学?から見た歴史?の本。(クエスチョンマークを付けたのには理由がある。)出た当初は、その比較的学術的な内容にもかかわらず予想外の大ヒットとなり、とくに財界人や政治家の間でも広く読まれたという評判の本だった。今回、Kindleでサンプルをダウンロードしてみたらちょっと面白そうだったので、残りも購入したのだが –
読後の感想は、「長い、くどい、うっとおしい。」
著者は、なぜヨーロッパ人が近代世界を制したのか、なぜ逆にニューギニア人がヨーロッパを征服しなかったのかという問いを投げかけ、その答えを人類史に求める。19世紀的史観によれば、これは人種、文明の優劣ということになるのだが、著者は「人種間に能力の差はない」(これは「人種間に能力の差がある」という仮説と同様、実証されたわけではない)という仮説を当然の事実とした上で、文明の発達速度の違いは地域による気候、植生、動物相の違いといういわば偶然の産物であると論ずる。
たったそれだけのことを示すのに、果たしてこれだけの紙数が必要だろうか?
なるほど、文章は比較的読みやすい。ただ、好みの問題かもしれないが、内容と不釣り合いなほど平易で繰り返しの多い文章は、ともすれば condescending で鼻につく。
また、著者が論拠として挙げている evidence には様々なところから異論が出ているが、わたしの目に止まったのは文字の発明と伝播の項に登場する「日本語と漢字」の下りである。いわく、日本人が簡便な表音文字のみのシステムを使わず、いまだに中国からの借り物である漢字を使うのは、漢字使用に付随する prestige のためであるという。
はあ〜?
愚考するに、日本語の書き言葉が漢字を捨てないのは、同音異義語の多い現代日本語のボキャブラリーを有効に駆使するには、表意文字である漢字の使用が便利であるからである。わざと違った字を当てて多重の意味を含ませる、などというのは表意文字にしか芸当であるが、これは表音文字言語使用者には理解すべくもない概念なのかもしれない。(中国人は非漢字圏の人名を記載する際、好ましく思わない相手にはわざと悪い意味を持つ字を当てるという。)
もちろん、これなど、この大作全体からみれば、取るに足らない枝葉末節であることは重々承知の上であるが、このような sloppy さを見せられると、他の例まで信用できるのかどうか疑ってしまうのが人の常ではないだろうか。
個人的にはAmazon.comのレビューの中では、E. Robe(2つ星)、Christopher A. Smith(3つ星)にほぼ賛同する。たしかに一読には値する本ではあるが、ここに書かれたことを事実として受け入れるには論拠が弱すぎる。