The Soloist

精神を病んでジュリアードを中退したホームレスの男と、最初は記事のネタとして彼に接近した新聞記者の実話にもとづく映画。

弱肉強食を医療制度にまで持ち込んでいるアメリカでは、ホームレス人口のかなりの部分が精神疾患をかかえていると言われる。病人を世話する気力と財力のある家族がいればいいけれど、そうでなければホームレスになるしかない。ここに登場する実在のホームレスの演奏家エアーズも、母親が生きている間は母親と暮らしていたらしいが、母親の死後、カリフォルニアにたどりついてホームレスになったらしい。

新聞記者ロペスは、最初は記事のネタとしてエアーズに近づくが、次第に彼の生活に入り込んで、住む場所やチェロの教師を手配したりするようになる。ジャーナリストは取材相手の生活を取材するだけで、直接手を出さないのが常識。その点からみれば、ロペスの行為は取材の原則に反していることになる。実際、ロペスがエアーズの記事で賞を受けた際に、彼の前妻が「あなたはエアーズを利用してるだけだ」と酒の勢いで口走る。

作中に流れるクラシックはほとんどがベートーヴェンだが、その中でも弦楽四重奏曲15番の第三楽章が何度も登場する。この楽章は、ベートーヴェン自身が重病を患った後に作曲され、「リディア旋法による病より回復しつつある者の神への感謝の聖歌」(Heiliger Dankgesang eines Genesenen an die Gottheit, in der lydischen Tonart)と題されている。これはおそらく音楽による癒しをひとつのテーマとする本作品の主題を意識してのことだろう。

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