Yes We Can 2

昨日の記事の題にも使ったYes We Canはオバマキャンペーンのスローガンの一つであるが、選挙の話題の続きをもう少し。

家人は家にいるときはずっとFMラジオでクラシックをかけているのであるが、シカゴ地域に住んでいた頃はWFMTという局だった。この局で比較的よく放送していた作品にAaron CoplandのLincoln Portraitがある。日本ではそれほど聞く機会がないかもしれないが、第二次大戦中に作曲されたいわゆる愛国音楽で、リンカーン大統領の演説がナレーションとして入る。アメリカでは各州それぞれ「お国自慢」があるが、シカゴの位置するイリノイ州の第一の自慢は、何と言っても「リンカーン大統領」であろう。厳密にはリンカーンが生まれたのはケンタッキー州であるが、政治活動の本拠地はイリノイ州だったから、リンカーンと言えばイリノイ、ということになっている。イリノイ州の自動車のナンバープレートにはリンカーンの顔がついており、州の標語は、ずばり、Land of Lincolnである。(逆に言えば、他に自慢するものがないからとも言えないこともないが。)

アメリカの大統領に限らず、歴史上の人物は時代とともに評価が変化するものであるが、死後150年ちかくが経過した現在でもリンカーンの評価は一定して高い。(ちなみに来年はリンカーン生誕200年。)オバマは大統領選の選挙活動を始めるにあたって、イリノイ州の州都スプリングフィールドで出馬表明をし、明らかにリンカーンのイメージをちらつかせた。(シカゴはイリノイ州最大の都市だが州都ではない。)シカゴの新聞、シカゴ・トリビューンは、創設以来160年以上の歴史上はじめて、民主党の大統領候補を支持した。リンカーン大統領の奴隷解放によって蒔かれた人種差別廃止の種が、回り巡ってイリノイ州を本拠地とする(オバマも生まれはイリノイではない)黒人大統領の誕生で結実する、まあ、ちょっとドラマとしてはあまりにお手軽な気もしないではないが、戦争と不況で疲弊したアメリカ国民の心には、これくらいわかりやすいメロドラマが必要なのかもしれない。

2 thoughts on “Yes We Can 2

  • November 7, 2008 at 6:11 pm
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    どこぞの国の首相が、オバマさんは「よく日焼けして・・・・」なんて失言していますね。
    これからは、良くも悪くも、黒人(混血ですが)の大統領というモノを背負っていかにといけないわけで・・・・。
    それなら、しっかり利用してと言う意図も見え隠れするわけで・・・・。

    人種問題は奥が深い。

    と言うか、島国の日本人にはなかなか理解しがたい。
    今回、アメリカの若い大学生の世代は、簡単に人種問題はクリアできているみたいな報道がありました。そして、若い世代が年輩の人種差別から抜け切れない世代を教育するんだなんて・・・・。実際問題、どうなんでしょうね。
    私がアメリカにいた頃は、人種問題は触れてはいけないタブーで、暗黙の了解的なものがありましたが、やはり同じなんでしょうかね。

  • November 7, 2008 at 11:28 pm
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    オバマを育てたのは白人である母親、母方の祖父母なので、そういった意味で彼は黒人じゃない、という意見もあります。市民権運動以降の世代にとっては、肌の色が理由でどうしても受容できないという偏見はほとんどなくなったと思います。もちろん、知らない相手に対して無意識のうちに抱く先入観というのがはっきり残っていることは否定できません。でも、古い世代が高齢化していくとともに、そういう「伝統」も死に絶えていくのでしょう。

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