アメリカ洗濯事情

アメリカの家庭では、洗濯物は乾燥機で乾かすので、「干す」という行為をしなくなって久しい。しかし、この数年、エコロジーブームと相まって、洗濯物を干すことの価値が、一部で見直されつつある。

一般のアメリカ人に、「どうして洗濯物を干さないの?」と尋ねれば、「面倒」(乾燥機は洗濯機の隣に設置するから、濡れた洗濯物を抱えて歩き回る必要がない)、「外に干すと汚れる」(確かに花粉の季節などは、花粉が付くだろう)、「隣近所に洗濯物の内容を見られたくない」(日本より大概庭は広いんだから、場所さえ選べば、近所から見えないと思うけどなあ)などという理由を挙げるであろう。しかし、多くの場合、一番大きな理由は「外に干すことは禁止されているから」だと思う。

「大草原の小さな家」のインガルス一家みたいに、大平原の真ん中に住んでいるならいざ知らず(アメリカには今でもこういう場所は結構ある)、中以上の都市に住んでいると、市や町の条例で、庭で家畜を飼うことなどと並んで、洗濯物を屋外に干すことが禁止されていることが多い。町の条例で禁止されていなくても、計画開発された住宅街(たいていは、元、農地だったところを開発して、中から中の上くらいの階層を相手に、無個性な建て売り住宅を売っている)では、ほとんど必ず自治会が洗濯物の外干しを禁止している。これは何故か?

この考え方の背景には、「洗濯物を外に干す」イコール「スラム(貧困)」というイメージがあるようだ。どうして洗濯物を外に干すことが貧困につながるのか、そこを的確に解説したものに出会ったことはないのだけれど、思うに、乾燥機が普及し始めた頃に、「外に干す」イコール「乾燥機が買えない」イコール「貧困」という図式が出来上がったのではないか?アメリカは広告業、イメージ戦略でマーケットシェアを拡大する国なので、この背後には家電製品業界の思惑があったのかもしれない。

clothes line?

しかし、乾燥機が普及する以前は、アメリカ人も外で洗濯物を乾かしていたのである。今の家は、書類の上では築101年だが、近所の人の話ではこの界隈で一番古い家のひとつで、建ったのは19世紀末だろうという。そのおかげで、屋根裏の召使い部屋やら、台所に直結する召使い専用階段といった、最近の家には絶対ないような面白いものがいろいろ残っているのだけれど、(ちなみにこのあたりは不動産が非常に安い、というか、不動産バブルの影響を強く受けなかったため、シカゴ辺りだと億(円換算で)を下らないような家がお手頃価格で買えてしまう)庭の片隅に変な鉄の棒のようなものが立っている。わたしにはこれが何か、皆目見当が付かなかったのだが、旦那に言わせると、洗濯ひもを張り渡すための支えだろうという。洗濯ひも!そうか、この国には物干ざおも、竿竹売りもないのだ!

さて、光熱費の点から考えれば、このように巨大な家は持ち主泣かせで、我が家でも気持ちばかりの節約のため、洗濯物は干すことにした。外に干しに行くのは面倒だし、花粉や埃だらけになるのもいやだから、うちでは地下室に干している。最近の流行では、洗濯機はキッチンやベッドルームの側にあることも多いが、うちは古い家だからそのような流行からは約百年遅れており、洗濯機は古典的に地下にある。しかも地下室はこれまた最近の家と違って内装が施されていない(unfinished – 内装が施され、部屋として利用できる状態は finished という)。いくつかフックを付けた板を天井近くに取り付け、それにひもを渡せば、ほら、洗濯物干場の出来上がり!

clothes line!

しかし、物干ざおに馴染んだ身としては、この「ひも」というのはどうも頼りない。郷に入れば郷に従えといいますが。

歴史ものの映画などで、裏庭に洗濯物が満艦飾に干されたシーンが出て来ることがあります。機会があれば見てください。

2 thoughts on “アメリカ洗濯事情

  • May 26, 2008 at 6:37 pm
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    NYにいたときは、自分の部屋に洗濯機や乾燥機を持ち込むことすらダメといわれました。ビルの地下に共同のコインランドリーがあって、そこを利用するようにとの事でした。
    でもね・・・・。
    一度、洗濯機でスニカーを洗っているのを見かけてからは、使えなくなりました。こそっと、洗濯機と乾燥機を個人購入し、部屋に持ち込んで使っていました。だから、排水ホースを付け忘れて床中水浸しにしたときは大変でした!!
    乾燥機は、服が縮んでしまうのと、落ちなかった油汚れを除けに定着させてしまうので、最小限だけ使って、あとはバスルームに干していましたっけ・・・・。

  • May 27, 2008 at 10:55 pm
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    NYのアパートはすごく洗濯機を嫌うみたいですね。分譲のco-opやcondoでも、自分のユニット内に洗濯機を設置することを禁止するところが結構あるようです。集合住宅だから、水漏れしたときの危険を考えてなのかしら?でも、それだったら、食器洗い機も、果てはお風呂もダメですよね。それとも、自分で洗濯の心配をしなきゃならない貧乏人(=一般人)はNYに住んじゃだめということでしょうか。そう言えば、NYのアパートに住んでた時には、地下のコインランドリーに、通いの洗濯のおばちゃんみたいな人がいましたね。多分、彼女に頼めば、ワンロードいくらで、洗濯して乾燥機に放り込んで、たたんで部屋まで届けてくれたのでしょう。
    カリフォルニアのアパートには、共同のコインランドリーの他に、ユニット内に洗濯機を置けるスペースがある所もありました。アメリカのアパートは、家電製品は部屋に付いてきますから、わざわざ洗濯機だけ買うのも面倒で、買わずにコインランドリーで済ませてましたけど。
    アメリカはメイドサービスが安いので、最近では中より上の家庭では、掃除、洗濯は他人任せのことが多いようです。

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